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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

 また英語だ。

「なんて言ったの?」

「前に言っただろ? お金が気になるのなら俺の家に来て、なにか作ってって言ったんだ。愛情料理食べさせて?」

「……っ」

「男に恥をかかせない。ほら、行くよ?」

 あたしの頭を軽くぽんぽんと手のひらで叩いて、朱羽はあたしの手を握り、ホテルと棟続きになっている、あたしが契約している携帯電話会社のショップへと向かった。

 お店で朱羽に見惚れるお姉さんに何度も咳払いをして、画面がひび割れて電源が数秒で消えるスマホを出したら、保守契約をしていたためにその場で新しいものに交換してくれた。

 朱羽はあたしとは契約している携帯電話会社は違うけれど、彼と同じ機種がこちらにもあったようで、一緒にしたいと勧めてきたが、あたしのスマホの機種は出たばかりで替えたばかりだし、使い慣れたものがいいと却下。

 データは復旧できなかったが、クラウドで外部保存していた電話番号や写真データ、アプリなどを、お店のひとが取り込んでくれた。

 店から出たあたし達は、復旧できたあたしのスマホのLINEのアプリをじっと見て、おずおずと自分のスマホを出した。

「あのさ……」

 言いにくそうにして、少しだけ顔が赤い。

「LINEのID……教えて」

「うん、いいけど?」

「……やった」

 朱羽は小さい声で歓喜の声を出し、嬉しそうに綻んだ顔をする。

「え、それだけ?」

「うん。あなたは……、俺の会社のメールアドレスも知っているのに、メールとか、してくれないな……欲しいな……とか、思ってて」

 朱羽は恥ずかしそうに伏し目がちに俯いた。

「渉さんから俺の電話番号を聞いて、電話してくれた時嬉しかったのに、それから電話も来ないし……」

「大体一緒にいたから、メールや電話しなくても用件は伝えれるし」

「用件じゃなくてさ、もっとプライベートなこととか、話したいなとか思ってたから。結城さんや真下さんとみたいに」

「普通、上司にそんなこと出来る?」

「だから、早く上司じゃなくなればいいな……とか……。LINE、結城さんと楽しそうだな……とか。俺も、結城さんみたいにハートがついたスタンプ……押してみたいなとか。渉さん相手にさすがに使ったことないし、最初はあなたに使いたいなあとか」

 この生物、どうしよう。

 なんでこんなに可愛いこと言ってるの?
 
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