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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
そうした女にとって極上の男と歩いていれば、やはり当然、通行人が振り向く。
特に地下鉄に乗るために地下に潜ると、人の波が多くなり、狭い空間で向けられるその目が痛くて、手を離して朱羽と距離をあけて歩こうとしたのだが、朱羽の手が離れず、さらに力を入れてお仕置きとばかりにぎゅうぎゅうと握ってくる。
この状況を見たまえ、朱羽くん。
私鉄を待つために並んでいるこの列ですら、あちこちから見られているじゃないか。あなたは芸能人以上の美貌と、どんなにスーツで隠していても普通以上の色香がにじみ出ているんだから。
人の波に押されるようにして椅子の前のつり革に立つと、座っているひとからも立っているひとからも、羨望と嫉妬の眼差しを一斉に浴びたあたし。さすがに朱羽もこの視線に気づいて諦めたのか、手を離してくれてほっとしていたら、その手を持ち上げてあたしの右肩を抱き、そのままあたしの頭を彼の肩に凭れさせる。
「あのね、ちょっと……」
さすがに恥ずかしい。
公開羞恥プレイだ。
「ん?」
「ん? じゃなく、あたし見なくていいから、今すぐ手をどけてまっすぐ立つ、普通に!」
小声で言ったのに、手は離れるどころかぎゅっと力を込められる。
これはドSが発動しているのか!?
朱羽の声が耳に囁かれる。
「そんなに抵抗されたら、俺、あなたに嫌われているように思えて悲しいんだけど」
この……一見冷たくも思える黒髪眼鏡が、そんなことを言っているとは誰も気づいていないだろう。
「俺のこと、好きじゃないの?」
「く……っ」
それ反則!!!
……そしてあたしは、いい子いい子というように頭を撫でてくる朱羽に肩を抱かれたまま、目的地まで真っ赤になって踏ん張った。
いろんな意味でドキドキが止らない。