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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 


 目的の駅で降りた時、軽く睨み付けて物申した。

「人様の前でなんということを!」

「だって牽制しないと」

 つらりとしながら、出口まで先導する。

「その分あたし、嫉妬の視線を浴びるんだよ!? 女は怖い集団だよ!?」

「俺が牽制したのは女じゃないよ、そんなのは本当にどうでもいいけど、むかつくなあ、あなたを見てた男達!」

「お、男……?」

 あの視線を向けていた女達以外に、男が居たのかすら記憶にない。

 だけど朱羽の言い方では、男は複数居たようだ。

「そう男だ! あなたが色っぽさを増して可愛くなったから、鼻の下のばして見てたじゃないか。だからあなたは俺のものだと見せつけてやったんだ」

 してやったりと上機嫌。

「いや、それはないって」

 ましてや色気なんか。

「あたしいつもと同じ顔だよ、それは考えすぎ」

「違うよ」

 朱羽はむくれている。

「男なら、あなたから立ち上る女の色香も、あなたが男をそそる女なのもよくわかる。だって俺、一生懸命あなたを愛して女にしたもの。元々綺麗で可愛かったけど、抱く度にますます俺を煽るように女っぽく色っぽくなっていったから俺、ひと箱使い切ってしまったんだぞ」

「ぶはっ」

 思わず赤面して、吹き出した。

「あなたをずっと熱愛中の俺の恋人だって見せびらかそうとしたけど、この分じゃ邪な視線が気に障るなあ。絶対、あなたに俺は不釣り合いだと思ってるんだよ」

 ぷりぷりして怒る朱羽。どうやら冗談ではなく本気らしい。

 あ り え な い。

 このひとどこまであたしを女神様にしてるんだろう。抱き合ってわかったじゃないか、よくて凡の女だって。

 朱羽の台詞はすべてあたしが朱羽に向けたいものだと思いながら、クールな外見に似合わず、朱羽が可愛くて笑ってしまうあたしは、端から見ればかなりのバカップルだろうなと考える。

 愛される喜びに幸せを感じながら、まだぶちぶち言っている朱羽を見て、とうとう堪えきれずに声をたてて笑ってしまった。


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