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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
手首のところに黒いリボンのアクセント。そこから袖は広がって、スカートはタイトだが、腰のあたりにも黒いリボンがついている。
「お客様はお肌が少し黄色味かかっていますから、ピンク色が映えます。そう、お客様のチークの色合いがよろしいかと。お選びになられていた鮮やかなものより気持ちほんの少しだけくすんだ色の方が、白黒からの抵抗感がなくなるかと思います。これなら、黒いカーデガンや上着を着て打ち合わせにも行けると思いますが」
朱羽の目がきらきらしている。
あたしもそうだろう。あたしはピンクが似合う色なのか。一番忌避していた色だったけれど、着替えさせて貰ったら、別人のように明るい顔をしたあたしが、鏡にいた。
甘さとエレガントさが融和したようなデザイン。
首元のペンダントも喜んでいる気がする。
「お客様はウエスト周りが細いですから、露出を避けながら身体の線を出すと、同性にも嫌味がなくていいと思いますよ」
いつも黒で隠していたあたしとしては、初挑戦のデザインで。
「これを頂きます。これを着て帰ります」
朱羽が問答無用でお財布を取り出した。
「やっぱり自分で買う……」
「駄目! 俺が気に入ったから、俺が買うの!! 他に欲しいものない?」
「いいですいいです、これだけで。はい」
朱羽が会計の方に行った間、あたしは鏡の前でくるくる回りながらお気に入りになった、初めての淡い色のワンピースを眺めていた。
この色なら好きだ。
会計が終わったらしく呼ばれた。
「恋人さんですか?」
にこにことおじさんが聞いてくる。
もじもじとしてしまうあたしの横で、朱羽がはっきりと頷いた。
「はい、そうです。彼女に、素敵な服ありがとうございました」
無性に照れくさくて仕方がない。
「いえいえ。綺麗な彼女さんと彼氏さんで。なんだか考えていることが同じで、微笑ましいです。またいらして下さいね」
考えていることが同じ?
思わず朱羽と顔を見合わせ、そしてあたし達は店を後にした。
近くの喫茶店でお昼をとるために入る。
ランチを頼んだ後、あたしは朱羽に渡そうとバッグの中を覗く。すると朱羽がなにか包みを出した。
「これもプレゼント」
「へ?」
「あなたにいいなと思ったから」
朱羽が照れたように言う。