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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
 

「……嘘、これも貰ったのに悪いよ」

「いいから。それをつけて?」

「うーん。だったらこれあげる」

 あたしも包みを出した。

 同じ店だから勿論包装も同じ。形も似ている。

「お誕生日プレゼント。使って貰えると嬉しいな」

「いいのか? うわ、なんだろう」

 あたし達は包みを開けて同時に出した。

「あ」

「はは」


 朱羽がくれたのは、あたしが選んだスマホケースの色違いのワイン色の方で。朱羽はあたしがあげた青色のものを見て嬉しそうに微笑んだ。

「これか、考えていることが同じって店長に言われたのは。いつ買ってたんだよ、この色凄くいいんだけど」

「ふふふ、最初にこっそり。よかった、あたしも欲しいなと思っていたから。やだなあ、朱羽まであたしの真似して名前入れて貰ったの?」

「真似したわけじゃないよ。でも名入れが決め手だった」

「あたしもあたしも!」

「じゃあスマホも恋人同士。よろしく」

「よろしくね」

 笑いながらケースをつけたスマホの角同士、コツンとぶつけあった。

 にやける顔を押さえながら、朱羽と笑っていた時だった。



「ふざけるな!!」



 店内に男の声がして、ばしゃっと水がなにかにかかった音がしたのは。

 あたしと朱羽は、隣の観葉植物の隙間から覗いて見る。


 そこに居たのは――、


「あれは、向島専務と……」


「あいつと寝ろと言っただろう! 身体しか取り柄がないのに、あいつを置いて逃げるってなんだ!!」

「ごめんなさい。怖くて……」


「千絵ちゃんだ……」


 謝っている千絵ちゃんの顔は水で濡れていた。どうやらお兄さんである向島専務が、妹である千絵ちゃんに水をかけたらしい。

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