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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
 

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 歓迎会は親睦を深めるために居酒屋で鍋にした。

 一列に長い和室の個室で開始。

 堅苦しいことなく無礼講でいくぞと、とあたしの挨拶の後の社長の後押しが良かったのか悪かったのか、部ごとに固まらせたはずなのに、杏奈のはた迷惑なハイテンションマイワールドの犠牲にならずにすんだ女子社員が、次第にイケメンに吸い寄せられる様は面白い。

 人当たりのよい結城の元か、たくさん酒を飲んでも顔色ひとつ変えないどこまでもクールな香月課長の下か。
 
 今まではほぼ結城ばかり集中攻撃受けていたが、正反対のタイプの香月課長が加わったおかげで、結城にふられた社員が挽回とばかりに頑張っているのを見ていると、イケメン好きな女子は大変だなと思う。
 
 衣里は社長や専務と常務を主に、あたしはあぶれた可哀想な男性社員を励ますべく、瓶ビールを持って回っていたが、突然後ろから結城に腕をとられて瓶ビールを奪われ席に座らせられ、代わって結城が回り始めた。

 あたしの笑顔が強ばってきたのを、目敏く見つけてくれたらしい。
 
 気合いと根性で頑張ってきたけれど、リミットが近づいていた。
 
 女子社員を攫った結城からビールを注がれた男性社員が笑っているのを眺めて、本当に結城は同性異性関わらず好かれるなあと思いながら、疼きにざわめく腕を撫で鼓動を落ち着かせていると、隣に座るひとの気配がして、ウーロン茶が入ったコップを差し出された。

 あたしの変調に気づくのは結城ぐらいだから、てっきり結城が戻ってきたのだと思って、思わず口を滑らせてしまう。


「ありがと。悪いけど、二次会一緒に抜け出してね」


 黒髪に眼鏡、切れ長の目。

 一気に空気が冷え込んだその主は、結城ではなかった。


「大丈夫ですか? はい、ウーロン茶頼んできたので、一息ついて」


 香月課長――。


 あたしの言葉は聞こえていなかったみたいで、ほっとする。

 課長の姿を見かけなかったのは、女性陣を撒きたいためなのか、個室から出て店員から直接ウーロン茶を持ってくれていたかららしい。

「ありがとうございます」

 氷入りの冷たさがあたしの火照ってきた身体を宥めてくれる。
 
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