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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「私は社長の別宅から出たことがなかった。その中で与えられたパソコンを弄っているうちに、私はいつしか寂しさを紛らわせるようにプログラムを組んでいた。元々実の父親がプログラマーだったこともあって、パソコンは身近で簡単なプログラムの作り方は、小さい頃から教えて貰っていたから」
杏奈の手が汗ばんでいた。
「だけどそのうちプログラムを作れることを社長に気づかれて、身体に痛いことをされるか、プログラムで向島に役立てるかの二択の中で、私は生きるためにプログラムをしないといけなくなった。社長は真性のサディストで、本気で首を絞めたり、身体を切り刻むから本当に怖かったの」
あたしは、向島専務を思い出す。
千絵ちゃんに不埒なことをしていた彼は、血筋なのだろうか。
「向島開発が特許を取って大きくなったのは、ほとんどが私が作ったプログラムだった。私は"私が作った"なんて主張する気はないけれど、それを教えてくれて、私の奴隷のような生活に涙を流してくれたのが、宗司だった」
サディストの涙。
それは愛? それとも同情――?
「彼は私を社長の籠から解き放とうとしてくれたの。彼は当時常務をしている会社に私を連れて、私が居ないといけない必然性を社長に見せつけて。そのために一生懸命働いて、大きくしていった。最初は本当に小さなIT会社だったのに。……そして、頼り頼られの関係がいつしか愛になった」
杏奈は薄く笑って続ける。
「私はある時社長に呼び出されて、こう言われた」
――宗司を結婚させようと思う。