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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「あいつは三上への愛がこじれて憎悪になっていた。このままだと、三上がついた『好きな奴が出来た』という嘘は真実になって、そのために三上は、今度はあいつに向島社長より酷いことをされるかもしれない。それでも1年、三上は逃げ回った。だが追いかける向島の手から逃れるためには、俺もあいつより大きな権力が必要だった。そのために三上をシークレットムーンに入れた。丁度、シークレットムーンを立ち上げるためには、実力者がいないといけないと重役に言われていてな。それが二年前――」
どうして、朱羽を入れなかったのだろう。
彼をそこまで忍月が必要としていたのか。
「そうして、忍月の力で三上は今まで守られてきた。まあいつもの格好もカモフラージュになっただろうが」
向島専務は、愛するひとがあんなピンクのふりふりを着ているとは思っていなかっただろう。
朱羽が言った。
「そんな三上さんの格好を知ってか知らずか、それでも向島専務は諦めていなかった。渉さんに憎しみを飛ばして、渉さんを忍月の重役の席から堕とそうと、渉さんの反対派である副社長に接触した」
「おい、朱羽……」
「渉さんが話してくれないから、気づくのに今までかかってしまいました」
「なんで今だ?」
結城の疑問の声に、専務と朱羽は顔を見合わせ、お互い同じ意見に行き着いたのか頷いた。
「それは多分、母体である忍月財閥の事情かと」
朱羽の冷ややかな顔が気になった。
なぜ彼はそうはっきり言える?
「忍月財閥の次期当主であった、現当主の息子が病気で倒れて、とうとう亡くなった。そこで正当な後継者がいなくなり、その後継者問題で揺らいでいたので、その隙を突いて、あわよくば渉さんだけではなく、忍月も堕とそうとしていたのだと思います」