この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
周りの音が止まった――。
ゆらゆらと、彼の中の満月が揺れる。
まるで水面に浮かんでいるかのように、静かに……だけど力強く波打ちながら広がり、彼の瞳は満月の色に染めあげられていく。
あたしを惑わせる、熱を帯びた妖艶な色に。
琥珀色に。
彼の手から伝わる熱と強さが、あたしの思考を九年前までに巻き戻す。
激しく打ち込まれた腰。
爪を立てた汗ばんだ背中。
貪り合った唇。
満月が溶け琥珀色になった瞳を細めて、妖しく微笑む彼。
汗ばんだ身体であたしを抱きしめて、少し掠れた喘ぎ声を聞かせた彼。
彼の匂い。彼の髪の柔らかさ。
あたしではない名を呼んで、あたしに快感を刻んだ彼が、目の前にいる。
――好きだよ、チサ。
九年前の彼がいる。
抱かれたい――。
チサの代わりでもいいから、あの時みたいに抱かれたい。
そう思ったあたしの頭が、ツキン痛んだ。
発作だ。
頭痛を発端に消えていた音が復活し、喧噪が洪水のようにあたしの耳に溢れる。
――……ん! ……は……と……んだ。
――……して!? なんで……の!?
――……して、お……ん。
誰かが叫ぶ。
――いやああああああああ!!
満月が、金色に輝く月の光が、あたしの中で暴れる。
すべての色を、一色に塗り替えたいかのように。
すべての記憶を、消し去りたいかのように。
抗えない。満月のこの膨大な魔力に惑ってしまっては。
この衝動が、止まらない。
ああ――。
身体の疼きが止まらず、身体を掻きむしりたい。
あたしの身体を覆うすべてを脱ぎ去りたい。
目の前の琥珀色があたしを動的に扇情する。
抱いて、抱いて、抱き潰して。
理性が悲鳴を上げる。
やめろ、やめろ、彼から離れろ。
理性と本能がせめぎ合い、その苦しさにあたしのは思わずテーブルの上に突っ伏した。
止めどなく高まる情欲にぞくぞくが止まらない。
身体が汗ばんで、手足が震える。
下着はぐっしょり濡れているだろう。
狂おしいくらいに彼が欲しくてたまらない。
めちゃくちゃにされて、思い切り貫かれたい。
この乾きを、どうか癒やして――。