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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
***
たらこを崩し、調理台で熱いご飯を朱羽と握る。
すべてあたしが握ろうとしたのだが、朱羽はどうやら作ったものをお互いに食べさせたいらしい。
いやらしいことをしてしまったキッチンで、あたしは朱羽のため、朱羽はあたしのために握るおにぎり。
……間近で、しかも異性とこんなことをしたことがなくて無性に照れる。
「さあ、のりが巻けた。はい、陽菜の分」
朱羽は男だから、正直無骨なおにぎりが出来上がると思っていたのに、硬すぎず柔らかすぎず。真ん中がぷっくりと太ったそのおにぎりに驚いた。
「なんで朱羽の方が美味しそうなの!? なに、おにぎりマスターだったの!?」
「なんだよ、おにぎりマスターって。愛情がこもっているから、きっちりと作ったよ。はい、あーん」
思わず口を開いてしまうと、のりが巻かれたおにぎりが差し込まれた。
ひと口食べただけで幸せが広がる。
「美味し~」
そうおにぎりを食べている間に、即席にしてはいい匂いを放ちながらぐつぐつと煮だつ豚汁を、朱羽はお椀におたまでよそってくれた。
絶品のおにぎりを立って食べるなんてもったいなくて、皿に置いている間に、朱羽は既におぼんに湯気だったお椀を乗せていた。
あたしが作ったおにぎりの横に、あたしが囓った朱羽が作ったおにぎりを乗せて、朱羽とリビングに移動する。
ラグの上で座って食べようとしたら、後ろからあたしの両脇の下に朱羽の両手が差し込まれ、そのまま持ち上げられて、ソファに座った朱羽の膝の上に後ろ向きに座らせられた。
「あなたを感じながら、あなたが作ったおにぎりを食べるなんて最高だね」
そう言いながら朱羽は手を伸ばしておにぎりを掴むと、あたしの唇にちゅっとリップ音をたててキスをしてから、おにぎりを食べた。
あたしもおにぎりを囓りながら朱羽を見上げていると、朱羽は長い睫を小刻みに震わせ、おにぎりを口から離した。
そして黙って、お椀を手にして味噌汁を飲むと、また睫を震わせて、テーブルに置いた。