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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
***
どうしても洗い物はあたしがしたくて、そして明日の簡単な仕込みもしたいために、朱羽に先にお風呂に入って貰った。
朱羽との快楽にすぐ負けてしまうあたしだけれど、実生活でやれることはきちんとして、必要以上に朱羽に甘えるのはよしたい。
前準備がすべて終わった頃、タイミングよく朱羽が戻ってくる。
眼鏡を外した顔で、纏っているのは真っ白なタオル地のバスローブ。
鎖骨付近が見える襟の部分から漂う色香に、鼻血がでそうだ。
「え、パジャマ派じゃなかったの?」
鼻を手で押さえながら尋ねる。
「そうだけど、どうせすぐ脱いじゃうから」
「……っ」
「なに赤くなってるんだよ。俺、夜中裸で寝ちゃうって前言っただろ?」
「あ、ああ……そういうことか……そうだよね、あはは」
「だけど陽菜のいやらしい考えも、あたっているけどね。一週間分、抱くから。ゴムもちゃんと箱もたくさん用意したし」
「……っ」
ストレートに言われて沸騰したあたしの頬を、朱羽は笑って指で軽く弾いた。そして冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルタブを引き上げて飲みながら、冷蔵庫の中身を見て首を傾げた。
「いつもなにもない冷蔵庫に、なんか形を変えて色々入っているけど……。このまん丸のふたつ、なに?」
それは――。
「ショートニング使った、アップルパイの生地」
「あのショートニング、アップルパイを作る気だったの? だからシナモンとかバターとか」
「……あの、嫌いだった?」
「そういうわけじゃない。ショートニング使ったアップルパイって、アメリカンスタイルだろ? だから向こうのこと思い出しちゃって」
「ええええ!? アメリカなの、それ」
本場で暮らしたことがあるひとに、無謀な試みではないのだろうか。
「本で?」
「いや、千絵ちゃん……」
不自然にどもってしまった。
千絵ちゃんとスイーツの情報交換をよくしていたのだ。
「これだったらそんなに手間がかからないから、いいかなって。お林檎美味しい季節だし」
千絵ちゃんのことを振り切るように、元気な声を出した。