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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「後継者争いといっても、皆それぞれ育った環境があるし、俺達の母親は、亡き次期当主……まあ、俺の父親だけど、その正妻にかなり虐げられて、すべて巻き上げられて外に放り出されたから、苦労していたみたいだ。俺達4兄弟の中で、渉さんだけが本家でかなり虐げられながら育ってて。渉さん以外、後継者なんて青天の霹靂で辞退したから、後継者の座は渉さんに白羽の矢が立てられた」
専務は、どんな過去をもっていたのだろうか。
社長に救われたその過去は――。
「渉さんは現当主に俺を次期当主にと推して、後継者争いというゲームの名目で、現当主にわかられない形でOSHIZUKIビルにあなたがいるシークレットムーンを招いて、俺を入れた。あなたと会えるように」
「なんで……、そんなのこのビル以外でも会えるじゃ……」
「妾の子が四人いるといった時点で、俺達の義理の母にあたる、亡き次期当主の正妻が、妾の子である俺達を蹴落としたくてあの手この手で攻めてくる。あなたは俺の弱点だ、迂闊にあなたに手を出したらあなたが酷い目に遭うかも知れない」
「そんな……」
「権力で人間らしさを失う世界なんだよ、忍月は。だけど俺が後継者の資格を持ったから、彼女……義母は俺の周辺に手を出せない。勿論あなたにも。俺は忍月の力を盾にしてる」
「………」
「俺が一番貧しくて庶民じみて病持ちで。後継者の資格を持つために、渉さんが苦心して忍月の力で、アメリカで教養を身につけさせてくれたようなものだ。後継者の資格を持ったから、現当主……じいさんから、車とこのマンションをプレゼントされた。俺がその力を利用する限りそれを甘受して、そしてこれを見る度、俺は次期当主候補としてじいさんに囲われていることを知る。俺の血肉は忍月の力で育ったようなものだ。自業自得とはいえ、逃れきれない咎のように、忍月が俺を縛る」
囚人だと彼は言った。
彼の色がないマンションと、使った形跡がない彼の車。
嫌だったのだ、朱羽は後継者になることが。
だけど後継者候補になったからこそ、あたしに会いに来てくれた。
……そして今、朱羽が利用したものに足を引っ張られようとしているのだろう。あたしなんかに、会いに来てくれたために。