この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「現当主が倒れたからといって、なんで朱羽が後を継ぐの? 宮坂専務は? 他のお兄さん達は?」
「渉さんは沙紀さんを力にして、忍月財閥を出たいんだ。だけど俺や会社を守るためにあえて忍月に居てくれている。他の兄達も嫌がっていると聞く。だとしたら、俺しかいないんだ……」
「朱羽は当主になりたいの?」
「なりたくない。ならないつもりで、今後を考えていた。だけど俺が当主をしなきゃ、渉さんが強制的に連れ戻される。今、電話でそう言われたんだ。当主はまだ話せるうちに、後継者問題にケリをつけたいと。心労からかなり声が衰弱していたくらい、体調が悪いらしい」
朱羽は自嘲気に笑った。
「二ヶ月、と言われていたのに、来週見合いだと言う!! 忍月の力に抗うための力を、まだなにもつけていないというのに!!」
朱羽は両手をぐっと強く握りしめた。
ああ、きっとシークレットムーンが窮地にあったからだ。
だから朱羽は、自分の身よりも会社の救済を優先してくれていたから、なんの準備も出来ていなかったんだ。
「……俺が拒めば、渉さんと見合いさせると。多分、渉さんにも電話が行っていると思う」
「そんな、だったら沙紀さんは……」
「………。最悪、別れさせられる」
鋭い目があたしに向けられる。
「わかるか、陽菜。忍月はそれほど容赦ないところで、渉さんと沙紀さんを犠牲にしたくなかったら、俺と陽菜が二の舞になる」
「……っ」
朱羽か宮坂専務か、あたしか沙紀さんか。
どちらかの心を切り裂いてまで、次期当主にならないといけないの?
あたしは……、ただの朱羽が好きなのに。
忍月財閥の当主なんていらない。香月朱羽が好きなのに!!
「俺が当主に確定したら、必ず結婚させられる。力をつけられていない今の状況、それを回避するのは……」
朱羽はあたしの手を握って、静かに言った。
「あなたを俺の婚約者にすること」
「な!」