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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「俺があなたを庇うだけではだめだ。見合いをなくすためには、あなたもまた、あの義母と祖父を納得させないといけない」
「……っ」
「それだけじゃない。結婚していない、ただの婚約者というステータスだけで、あなたは上流界の作法や付き合いを覚えないといけない。仕事なんてしている暇がない。だから仕事を辞めれるかと聞いたんだ」
頭がぐらぐらする。
あたしが上流界?
あたしが、忍月財閥を担う朱羽の妻?
身分不相応なのを、ひしひしと感じる。
仮に結婚云々は後回しにして、朱羽の見合い結婚をやめさせるために婚約者だと名乗り出たとしても、あたしが朱羽に相応しいと誇れるものはなに?
なにを武器に、朱羽の妻になりたいなど言える?
親に犯されたのに?
「あたし、褒められるところがなにもない」
すると朱羽は静かに頭を横に振る。
「……俺からすればいろいろあるけれど、それより俺が心配なのは、あなたの心がそこまでまだ育っていないことだ」
「え?」
「あなたは、まだ俺と家庭に入る気にはなれていない、だろう?」
朱羽が悲痛さに顔を曇らせて、あたしの頬を撫でた。
「だって、付き合ってまだ一週間よ?」
「そうだ。付き合って、まだ一週間しか経っていない。それなのに、こんな形であなたを追い詰めたくないんだよ、俺は」
「……っ」
「結婚って、好きだからするものだろう? 切羽詰まったからではなく、俺はあなたの心を待つつもりだったのに、なのにこんな……っ」
朱羽は唇を噛んだ。