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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
あたしはふと疑問を口にする。
「……それでも朱羽は、自分のことを囚われ人と言った。朱羽は、この先も自由になれないと思っていたんでしょう? だったら、あたしとも最初から別れる気だったの?」
「違う!!」
朱羽があたしの肩を掴んだ。
「打開しようとしていたんだ。二ヶ月の期間があるからと。俺も渉さんのような力をつけようと。だけど、予定が来週にまで迫って、俺は……渉さんしか頼れないのに、渉さんにこのことを相談は出来ない。渉さんは俺があなたを手に入れられるまで、俺のために骨身を削ってきた。そんな渉さんに、俺は陽菜と忍月に関係ないところで幸せになりたいからと、逃げることは出来ない。今度は俺が渉さんを幸せにしないと。俺が、我慢すればっ!!」
朱羽は唇を震わせて、あたしの唇を指で触れた。
「だけど俺は、あなたが欲しい。あなたと別れたくない。あなたが好きで仕方がないんだ」
やるせなさそうに笑う。
「あなたを失うと思うと、震えがくるほど我慢できない。だけど、愛するあなたを追い詰めたくない。あなたの笑顔を曇らせたくない。……本当にわかってるんだ。あなたは会社を愛してる。わかっているから、あなたを追い詰めることで、あなたが俺の手から逃げてしまいそうで……」
「あたしは逃げないよ」
あたしは強い瞳を朱羽に向けた。
「あたしの満月のように、朱羽の苦しみとも向き合いたい」
朱羽が息を飲むのがわかった。
「杏奈の気持ちはわかるけど、だけどあたしは……、杏奈と同じ選択はしない」
朱羽の瞳が揺れた。
「今度はあたしが、朱羽になにかをしたいの。あたしに出来ることがあるのなら、朱羽の婚約者でもなんでもして、朱羽の傍に居たい。孤独にさせないから」
「……っ」
「あたしは会社が好きだと言うこと、朱羽はわかっていると言った。だったらあたしが朱羽を好きだっていうことも、わかってくれてる?」
朱羽の瞳が辛そうに揺れている。