この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon


 結城におぶさっているあたしは、長身の香月課長よりは高くなっているはずなのに、刃物よりも鋭く氷よりも冷たい眼差しを受けて、彼の足元で動くアリほどの小さな生き物になってしまった気分だ。

 それならいっそ、思い切り罵倒して踏みつぶしてくれればいいのに、彼は萎縮するあたしを見つめたままだ。

 決して好意的には思えないその瞳は、爽やかな朝の光を浴びているはずなのに、闇よりも深い色に淀んでいるように見える。それなのに、怯えるあたしに、彼は笑って見せたのだ。

 極上に整った顔での笑みは、ぞっとするほどに美しく、同時に冷酷で。


 怖っ!!


 さらに改めて考えてみれば、ここに彼がいること自体が怖い。

 

「課長なんでここに!? そこ、うちなんですが!?」


 まさかこのひと、ストーカー!?

 動揺に声がひっくり返った。


「電話番号を知らないので、直接きました。タクシーで一度目にしているから。集合郵便受けの名前が鹿沼のものは、ひとつしかなかったので……」


 ああ! あたし一昨日、タクシーでこのマンションだと告げたんだ。


「それで……、朝から何のご用で……? 会社じゃ駄目だったんですか?」


 すると、昨日までのセットが崩れ、さらさらとこぼれ落ちる長めの前髪を、手でくしゃりと掻き上げ、自嘲するように笑った。

 その顔は頼りなげで――、


「そう……ですよね。あなたは元々、結城さんと抜け出す気でいた。だから、心配することはなかったはずなのに……」


 泣き出しそうなほど。


 課長は床に置かれていた荷物を手に取り、言った。


「あなたのバッグと……、これ…どうぞ」


 バッグは衣里が持っていてくれているだろうと思っていたけれど、香月課長が持ってくれていたらしい。

 そしてもうひとつは、コンビニ袋。

 既に温くなっているプリンが数種――。


 これは、今しがたコンビニで買ったものではない。

 もっともっと前に買われたものだ。

 
/1291ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ