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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 
 結城がポンポンと宥めるように、あたしの尻を叩いた。
 

「だったら、俺は牽制するだけですね」


 そんな優しげな仕草とは反対に、結城の声は力強い意志に溢れている。


「牽制?」

 課長の切れ長の目が訝しげに細められた。


「ええ。俺と鹿沼が寝たことで鹿沼が不利な立場になるのなら、俺も同じ方法であなたを制するだけ」

「へぇ? どうやって?」


 香月課長の口元が意地悪げに歪む。


「あなたは今、24歳だと聞きましたが」

「はい」

 結城は一気に言った。

「少なくとも俺が鹿沼と出会う八年前には、あなたも鹿沼を抱いていた。つまり、その時あなたは何歳ですか?」

「なっ、ちょっと結城!!」


――だったら、俺より前?

――それだったら、YES。


 ああああ!!

 あたしアホだ、アホすぎる!!


 結城とこうなる前の過ちだったと弁解したい気持ちが強すぎて、察しのいい結城に、時期を絞って教えたのと同じではないか!

 あの後沈黙が続いていたのは、結城はそれに気づいたからだ。



「それを理由に鹿沼を縛ろうとするのなら、俺にだって考えがある」


 いや結城、縛ろうとしていないから。

 むしろなにも言われていないから。

 いや、人間不信とは言われたけど、脅されているわけではないから。


 ……そう、九年前のことに、ちゃんと向き合っていないで、あたしは「大人」を理由に、逃げてばかりいる気がする……。



 結城が睨みつけていると、課長は突如笑い出して不敵な顔で、あたしと結城を見た。


「そんなことをすると、鹿沼さんの評判を落としてしまうのでは?」

「俺が守ればいい。それくらいの立場にいる」


 課長の顔から感情が消えた。


「では……お手並み拝見」

 
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