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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
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案内された茶室は、大広間から離れた場所にあり、母屋の中のちょっとした室内庭園を歩きながら、渡り廊下を越えた先の別棟にあった。
さきほどの大広間の三分の一くらいの大きさだが、それでも想像していた茶室よりかなり大きく、衣里曰く、京間畳という普通よりも大きな畳で作られているせいもあり、二十人など余裕で収容できるようだ。
上下に動く形の障子戸が、僅かに持ち上げられた形でずらりと並んでいる。雨が降り始めたのか、雨音がやけに響いて聞こえてくる。
奥には掛け軸と、花瓶に活けられた花。
掛け軸には、曲線としか思えない昔の文字が書かれている。
こんな高級感漂う部屋の造りからすれば、もっと華々しい花でも活けられた方がいい気もするが、花瓶に飾られているのは、草や枝に小さい花がついている……野草のような飾り気がない花々で、意外だった。
質朴な畳の藺草(いぐさ)の匂いが漂う中、静謐な空気を醸し出すのは、部屋の奥角に垂直になった二面の障子の間仕切りの間にひっそりと置かれているのは、炉を始めとした茶を点てるために必要な茶道具。
茶道具がなければ、高級旅館の特別室だ。
この茶室は広い。点てた茶をあたし達客に運ぶことを考えれば、近いところに座っていたほうがいい気がしたが、茶道の作法なんてすっかり忘れているようなぺーぺーが座る場所ではないらしい。
お茶をしたことがない木島くんが、真横に座ってガン見をしようと目論んでいたらしいが、朱羽に冷ややかに言われてすごすごと引き下がった。