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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
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感傷にふけながら、わがままプリンを全部食べてしまったのが祟り、気づいたら午前八時ちょっと前にまでなっている。
始業には間に合う時刻とはいえ、あたし史上初の遅刻だ。
机の掃除なんて出来る時間ではない。
しかも忘れてた。
今日金曜日は、午前八時三十分より定例の朝会議がある。
会議と言っても二階の会議室でするのではなく、秘書課を除いて、重役と共に二階から降りてきた社長に向かって、一階フロアで全社員が席で立ち、総務、営業、プログラム開発、WEBの四部の責任者が、今週した仕事と来週する予定の仕事を報告するというものだ。
つまり、始業時刻前からある、週に一回のあたしの仕事である。
午前八時四十三分――。
重い腰を動かして走り、シークレットムーンに滑り込むようにして到着した時には、社員がほぼ集まっている状況。
ぜぇはぁぜぇはぁ肩で息をする姿を見せてたまるかと、忍者のように前屈み、前傾姿勢で抜き足差し足忍び足、プログラム開発部の課長の報告を耳にしながらなんとか席に着くと、やる気なさそうに欠伸をしている社長と目が合った。
とりあえずはぺこりと頭を下げたら、社長が片目でウインクしてきた。それで終わってくれればいいのに、あたしの反応が悪かったせいか、両手で投げキスまで寄越したものだから、あたしは注目の的。
無駄に目立ってしまい、ひっそりこっそり入ってきた努力が無に還った。
「はい、次WEB。鹿沼~、お前大丈夫なのか?」
この流れで次はWEBなのか。
舌打ちしたい心地をぐっと堪えて、営業スマイル。
「はい、おかげさまで。ご迷惑おかけしました」
机の上に置いてある打ち合わせようノートを取り出し、既にまとめてあるものを読み上げ始めた時、ざわざわとした人の声が水紋のように広がっていく様を感じた。