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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
 

 にかっと笑う結城。いい奴だと感激して一口で食べたら、さらに新たな半分。

 むすっとしながら拗ねている朱羽だった。

「俺のも食べて」

「朱羽が食べたら……」

「食べろ」

 怖っ。

 そしてあたしは二個分お腹に入れて、満足だった。

 
 名取川文乃が、炉から湯を柄杓で汲んで茶碗に淹れているが、そのダイナミックな直線的な動きが雄々しくて、思わずあたしは魅入ってしまった。

 茶道は女子がするものだという概念があるけれど、彼女の淹れ方なら男性がしても格好いいと思う。

 ……朱羽がお茶を淹れてくれたら。

 きっとその凜々しさに悶えて、何度もおかわりしてしまうだろう。

 しゃかしゃかと茶筅が音をたてている。

 内から外へ、まるで呼吸をしているかのような洗練されたその動きは、ため息が出るほど美しい。

 マナー講座の先生以上だ。

 動の中の静、静の中の動。

 永久に続きそうなその動きは、まるで静寂に落とされた一滴の雫のように、音もなく水紋を次々に広げていっているようで。

 あたしは詫びも寂びもわからないけれど、それでも日本人として生まれたからわかる、この感慨めいた感動に心が奮えた。

 誰もの視線を浴びながら、彼女が点てたお茶が、朱羽に回された。

 茶碗の善し悪しはよくわからないが、古くて歪な灰色の茶碗で金箔がついたところが朱羽の正面に来ているようだ。


 裏か表か、それすら議論をしていなかった。

 トップバッターの朱羽は茶碗をどう回すのだろうか。

 反時計回りの表千家か、時計回りの裏千家か。

 
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