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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「正解と言いたいけれど、実際はもっと前に茶を持ち帰ったひとがいるわ。はい、早かった香月さん」
朱羽が手を上げ、そして言う。
眼鏡のレンズをキラン!と光らせて。
「空海と最澄……遣唐使ですか? 奈良平安期の」
「正解」
どよめきが起こる。
あたしは空海や最澄というのはお坊さんということくらいしかわからない。だってあたし、日本史大嫌いだったもの!
「だけど実際はあまり普及されなかった。それが茶が栽培されたりと本格的に普及されたのは、最初に答えてくれた彼……お名前……木島さん? 木島さんの仰った、鎌倉時代に臨済宗を開いた栄西ね。彼は主に九州地方にお茶を伝えた」
やはりここもお坊さんだ。
最初から茶は仏教と結びついているから、京都などでよくお寺で抹茶を飲めるのか。京都に行ったことはないけれど、情報誌でそういうのを見て、喫茶店でもないのに……とよく思ったものだ。
「室町時代は闘茶という、茶の銘柄を当てる遊びまで出てくるほど人々に馴染み、そして八代将軍足利義政が支援した茶人、村田珠光(むらた じゅこう)が禅宗の影響がある"佗茶"の原型を作り、享楽性があったものを精神性の高いものにしようとした。その佗茶を戦国桃山時代の堺の豪商、武野紹鴎(たけの じょうおう)が発展させ、豊臣秀吉に庇護された千利休が完成した。現在の茶道で有名な三千家は、千利休の教えを継承しているものね」
あたしは千利休しか知らなかった。
ムラタジュコウと聞くと「村田受講」と脳内変換され、タケノジョウオウと聞くと「竹の女王」と変換されるあたしには、実際はどんな漢字で出来た名前の人達なのかよくわからない。