この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
そうして考えてみる。
ネコを助けた時――。
「ヴァイスを捨てようと口にした時、あなた達は私に反論しました。見ず知らずの汚いネコなのに、家族だと命のあり方を説かれました。私のことを知らずとも、欲に満ちていないその清浄された心で」
"清浄"
「問題を正解したひと達だけに、寿司を出そうとしたところ、皆が、答えていない人々も"働いた"と、正解したひとと平等に食べる権利があるのだと言われました。仲間に常に手を差し伸べ続けている協力的な関係が、あなた達の誇るものだと」
"礼和"
「そして茶道を通し、あなた達の心を見ていました。取り繕っていい顔ばかり見せようとしていないか、なにか思惑がないのか。あなた達は、知らないものを素直に知らないと答えた」
"正直"
「全体的に、あなた達は自然体です。萎縮しようとしないのは、それは仲間がいるから。そして飾り気ないあなた達の言葉は、いつでもストレートに私の心に響いてきました。それなのに、都度嫌味を言ってごめんなさいね」
"質朴"
ここに、彼女が重んじる四つが揃った。
ああ、彼女は手を変え品を変え、あたし達を推し量っていたのか。
そして恐らく、こんな若造を前にして頭を下げる、謙虚でしとやかな姿こそ、彼女の本来の姿なのではないか。
彼女は極めているはずだ。
"正直、清浄、礼和、質朴"
だとすれば――。
「長々と失礼しました。……この名取川文乃、愛猫をお救いして頂きました恩義への礼に代えて、微力ながら皆さまをお手伝い致したく存じます」
歓声がぶわっと沸き上がった。