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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
専務の怒声は、社長の笑い声に遮られた。
「渉、やめろ。こちらが彼女の力を利用したいという姿勢を見せて、詰めようとすれば、名取川さんは怒る。彼女の善意に縋るしかないんだ」
「しかし、月代さん」
「あのひとが協力するというのなら、ベストの形で協力してくれる。出来ないことをやるといったり、冗談で終わらせるひとではない。あのひとが笑っていたということは、お前達を気に入ったんだろう。それにネコを探してやったんだろう? あのひとは義理堅いひとでもある。お前達を守ってくれるさ」
「でも月代さん。株主総会はあさって、いやほぼ明日なんですよ!? 今どういう状況とか、打ち合わせがっ」
「大丈夫だ。あのひとの元には様々な情報が入る。その中で、うちがなぜ苦境となっているのか、どうすればいいのか、それを見抜いて手を差し伸べてくれるさ。もしかすると既に情報は入っていたから、詳細を聞かなかったのかもしれん。打ち合わせしないといけないのは、彼女とではなく、お前達なんじゃないか? 司会、進行、基本的なものの確認は出来ているのか?」
「……ああ~、くそっ。お前ら、式の流れと参加者リストを照らし合わせて確認と、もしものために綿密な作戦たてるぞ」
社長と同じ剛胆な気質を持つ専務が、社長相手に神経質になっているのが面白い。
彼はこうやって、作戦を色々考えて動くから、専務職になるまでの辣腕となったのだろうか。
副社長というライバルを抑えるために、専務もまた進退をかけている。
辣腕で人情味溢れるひとが、朱羽のお兄さん――。
忍月財閥に、朱羽と戦いを挑もうとする彼のためにも、シークレットムーンを安定させなければいけない。
既に、結城を社長とすることが会社を立て直す策と、あたし達が考えているということは、臨時株主総会の通知で副社長一派はわかっている。
こちらは手札を見せている。
向島と切った副社長が、結城の社長就任の妨害で動くとしたら、どんなものか。それを抑えるだけの力を、名取川文乃は持っているのか。
それでも信じるしかない。
あたし達は、差し伸べられる手をとりながら、シークレットムーンを助けることが出来ると。
それが出来なければ、もっと大きいところから朱羽を助け出すことなんて出来ない――。