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いじっぱりなシークレットムーン
第11章 Protecting Moon
「ねぇ、あたしが異性として好きなのは、結城ではなくて朱羽なんだけど」
「………」
「あたし、一生分好きだの愛してるだの、小っ恥ずかしいことを朱羽だけに言ってきたんだけれど。あたし、結城にも言っているように思えた?」
「………」
「朱羽は朱羽で、結城は結城。人当たりがいい結城を、朱羽は憧れすぎ。羨ましすぎ。……できっと、結城も朱羽のクールさとか理知的なところとか、凄く憧れていると思うよ? だったらあたしの出る幕ないじゃん。なに、朱羽と結城が相思相愛なんじゃない。朱羽は結城ばっかり見てる」
「………」
「ヤイテモイイデスカ?」
片言の日本語で、軽く睨むと朱羽は黙り込む。そして、手を伸ばしてあたしのほっぺをいい子いい子というように優しく撫でた。なにやら、わかってくれた部分があるようだ。
「Do you understand?」
なけなしの英語で尋ねた。
「Yes. Too much jealousy, I was going crazy.
(はい。嫉妬しすぎて、おかしくなりそうでした)」
流暢すぎる英語で聞き取れたのは、yesだけだった。
そしてあたしは思い出す。
「だけどさ。それを言うなら、朱羽。朱羽だって、アイツを朱羽の裸体に抱きつかせて、朱羽の匂い嗅がせて、同じ匂いで包み込んで、うっとりさせていたじゃない。そっちの方が大問題じゃない?」
「……ネコだよ?」
「それまで、ずっとあたしだけがそうやって幸せ感じていたのに、朱羽、アイツにもそうさせてたじゃない」
「ネコだってば」
「アイツとちゅうやぺろぺろもさせてたじゃない」
「だからネコだって……」
「浮気者!!」
そう叫ぶと、朱羽はあたしの腕を掴んで引き寄せ、抱きしめた。
「……あのネコ、オスだよ? 洗ってて気づかなかったの? 気づいても嫌だけど」
「へ?」
「なに、ネコに妬いたの?」
甘い声が暗闇に響く。
甘い甘い朱羽の匂い。
「だからあんなに喧嘩してたの?」
夜道、信号で止まっている車の運転手が、抱擁しているあたし達を見ているような気がする。