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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
「総会屋って、あの野次飛ばすヤクザ達でしょう!? そんなのが入っていたら、総会荒れるじゃない! いちゃもんつけられるのがオチよ!? あのヤクザ風腰のひとかな。それともサラリーマン風の気難しそうなひとかな。今思えば、他にも怪しいひと、いたんだけれど!」
半分パニックになりかけているあたしに、杏奈が笑って言った。
「鹿沼ちゃん。ひとを外側で判断しちゃ駄目だよ?」
杏奈が言うとやけに説得力がある。
今の杏奈はスーツを着ていて、秘書のコスプレをしているような感じがするが、スーツ姿も杏奈はイケる。
あの巨乳が、ブラウス越しとはいえ、悩ましい。
「そうだよね。たまたまヤクザ風のひとが来ていただけであって」
「そうだよ。杏奈や真下ちゃんのところなんか、厳つい顔をした黒服ばかりだったし」
黒服というのも怪しい。
「私のところは、頑固そうな年寄りばかりでした」
「私のところなんて、無言のままスマホ弄ってましたよ?」
「私のところは目つきが悪いひとがいました」
他の子達が口々に言う。
怪しいと思えば、皆怪しい。
怪しい人達ばかりなら、普通の人達の方が怪しく思える。
これでは際限がないため、あたし達はため息交じりにこの話題を止めた。
「あのさ……」
その時、朱羽が会場から出てきて、あたしに尋ねる。
「株主以外、観客許してたっけ。株主の席が埋まっているのに、後ろに何人か立っているんだけど」
「え? なんで観客がいるの? そもそも小さい会社の株主総会をなんで見ようとするわけ?」
「だよね……」
その時、木島くんが帰ってきた。
「課長、主任! マスコミ入れました?」
「マスコミ? 入れるなんて聞いてないよ、なんで!?」
「そうっすよね。後ろでテレビカメラを取り出して……宮坂専務がやめるように説得してるっすが……」
案内係がおらず、受付でもちゃもちゃとしている間に、すっと横から紛れ込んで中に入ったのだろう。
しかしなんでマスコミ?
そこまでうち、有名じゃないよ?