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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「そんなことするの、向島関係かな」
衣里が、低い声を出した。
「うちだってマスコミ使ったんだから、同じ手で報復してきたとか」
「向島がなにか仕掛けてくると? でも専務に気をつけろと忠告したんだよ? その意味、わからなくない?」
「うーん。そう見せて、実は副社長と切れてないとか……」
「それはないと思う」
そうきっぱりと言い切ったのは杏奈だった。
「宗司は、そこまで意地が悪くないよ。仮に香月ちゃんのはったりがわかったとしても、宗司はそれに騙されてしてやられたんだから、笑いながら負けを認めるような男だし。大体、宮坂専務に電話した時点で、画策なんてしてないと思う、杏奈は」
「あたしも杏奈に同感」
あたしは頷いた。
「……あたしも、向島専務ではないように思う。副社長だとしたら、こんなに堂々とひとを動かしているのがなぜか、そこが気にはかかるけど……裏にいるのが副社長であれ、違う人間であれ、警戒しないと。誰かが練った策にマスコミが必要なら、副社長グループの……うちに不利な質問攻めとかでうちの社会的信用が低下した場合、ダメージを回復する前に全国に筒抜けになっちゃうし」
嫌な予感がする。
裏で動いているのは、副社長なのだろうか。
会場をまた見渡しに行った朱羽が、不思議そうな顔をして戻ってくる。
「渉さん……、あのテレビカメラを受け入れたようだ」
「なんで?」
あたしの声がひっくり返った。
専務なら、殴ってでも放り出しに来そうだと思ったのに。
「わからない。渉さんにとっていい案でも浮かんだのか……」
会場には――純粋な株主だけではない、怪しいひとも紛れ込んでいる可能性が高くなってしまった。
マスコミを始めとした、怪しい……出席動機が不明な人達は、なんのために総会に出たのか。
「うちの重役は全員欠席。これは誰かに出席止められているんじゃない?」
嘲るような衣里の笑い声が耳に届いた。
専務は議長が出来るのだろうか。
結城――。
なにひとつ確認出来ないままに、不穏な空気が漂う株主総会が、幕を開けた。

