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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「そんなの、社長になろうとしている男がしなくてもいいだろう!」
「そうなんです、俺、社長になって、社員全員の能力を引き上げたいんです。ここに素晴らしい株主さん達が揃っているので」
副社長の言葉を逆手に取り、結城のペースだ。
「ここでこうしてお話して、皆さまがどんなに知恵と実力をお持ちなのかと実感いたしました。俺も……私も、そうやって会社を大きくしたいのです。皆さまへの教授料を、株の配当金にあててもよろしいですか?」
結城が茶目っ気たっぷりにそう言うと、笑いの野次が飛ぶ。
「それは、ポケットマネーだろ?」
「えええ? 皆さまの方が儲けていらっしゃるのに、貧乏暇なしの俺達から搾取するんですか? ひっでー」
結城のわざと砕けた言い方に、笑いが起きる。
完全結城のペースに焦った議長が止めるが、どんな権限をもってしても、株主達は笑って結城との会話を楽しもうとし始めた。
「なにも出来ない、やれないの若輩が、社長なんて務められる訳がない」
しかし副社長も頑張る。
「実力主義の忍月さんならそうかもしれませんが、私達は積み上げてきたものがあります。それは仲間。チームワーク。誰ひとり欠けてもいけない。まさしく適材適所に社員がおります」
「ふん。大勢やめただろうが。いいですかな、株主の皆さん。シークレットムーンは社員の半数が退職届を出してやめた。これは由々しき事態だと思いませんか!?」
向島からの情報は流れているはずだ。
そう仕向けたくせに、よくもいけしゃあしゃあと。
結城は動じず、笑って言う。
「はい。そのおかげで切磋琢磨されたようで、さらにチームワークがよくなりました。私は社長になりたいと思いますが、他の社員は私の欠けた部分を補う分身なんです。そして化学反応を起こし、化学変化を引き起こす」
月代社長、聞いていますか?
「私ひとりでも出来ないことでも、様々な能力を持つ仲間がいれば、不可能は可能になる! それがシークレットムーンです」
あたしはポケットの中のスマホを触った。
あたしは結城が頑張っている姿を社長にも知って貰いたくて、電話をかけて、ずっと通話中にしていたのだ。

