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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 

「ここで私は自白いたします。私はここの副社長と手を結び、シークレットムーンを潰そうとしていました。社員を引き抜き、取引先に手を回して取引をやめさせたのも、私と副社長の力です」

「なにを言っているんだ!!」

「お互いの利益のためです。それとは……」


 なぜか。

 そんなの聞くのは野暮だ。

 あたし達は歓喜に潤んだ目を向け合った。

 わめいて、違うと騒ぎ立てる副社長に、名取川文乃が一喝。

「見苦しい!!」

 それは政界の大物でもひれ伏せた、女帝の威圧感たっぷりなもので。

「それ以上わめくと、もっと……裏であなたがなにをしていたのか、ここで喋ってもいいのよ?」

「……っ」

「慢心が過ぎると身を滅ぼすと、私あなたにそう言ったわよね!?」

 まるで蛇に睨まれた蛙のよう――。

 ここまで短期間に大勢の取引先の重鎮を、そして向島専務まで連れて、副社長を叱咤出来たのは、名取川文乃の力がなければなしえないものだ。

 矢島社長があたしにこっそり手を振った。

 社長、忙しいのに来てくれたんだと感動しながら、手を振り返す。

 名取川文乃が微笑んできた。

 ありがとうございます、ありがとうございます……。

 あたしはぺこぺこと頭を下げた。


 そのすべては、テレビカメラが撮影していた。

 待機していた記者と思われる男女が、向島専務によって暴露された悪事を暴こうと、副社長と向島専務を取り巻く。

 ゴシップ記事となるのか。

 向島専務も、それを覚悟してここにきたはずだ。

 そこまで、名取川文乃の力は大きいのか。

 あたし達は一同横に並んで、結城共々駆けつけてくれた取引先の皆に頭を下げた。

 遅れて朱羽もあたしの横で頭を下げると、名取川文乃が笑いながら近づいてきて言った。

「私は、向島さんに連絡しなかったわ。丁度出くわしたから、一緒に来ただけで」

「え? じゃあ自分で?」

「ふふ、彼よ」

 彼――朱羽が鼻をポリポリと指で掻いた。
 
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