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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 

「……昨日の飲み会、主任、結城課長と抜けたでしょう?」


 会議室は誰もいないのに、ふたりで床に座り込んで内緒話。


「うんうん」

「そのままホテルに行ったんですか?」

「は、はぃぃぃぃ!?」

 否と言えない、この身の上。ただのけぞるだけのあたしに、千絵ちゃんは続けた。


「それでその後、香月課長とも自宅でしちゃいました?」

「なによ、それ!!」

 そこはきっぱりと。

「香月課長、主任の家から朝帰りしたんですよね?」

「それはちょっと語弊が。香月課長は心配してうちに寄ってくれただけで……」

 ……そう本人も言ってたもん!
 
「朝早くに主任の家に? 結城課長と同じく昨日と同じスーツで?」


 千絵ちゃんはスマホの画面を見せた。


「これが会社のアドレスに流れてきて、朝大騒ぎだったんです」

「会社のアドレスって、社員用の@secret-moon.co.jpのメールアドレスってこと? あたしに送られてないよ!?」

「だったら主任を除いた人達なんでしょうか。どこまでのひとに送られたかわからないけれど、送られたひとが噂をしていたら、送られてなくてもそれを知っちゃうかも。なんだか朝からわいわいとしていて……」


 スマホのメール画面には、『鹿沼はビッチ!』というタイトルで、文面は『二股悪女!』とだけあり、写真が添付されている。

 望遠で撮られた、画素数が少ない荒い写真がメインらしい。

 一枚は、あたしが結城に抱きかかえられるようにしてホテルに入る写真。

 そして次はあたしの家の前、香月課長とあたしが斜めに向かい合って立っている写真。

 それは結城におぶられているはずだったのだけれど、外の木々の枝葉に隠れ、さらには斜め角度のために結城が巧妙に見えず、課長が結城と話しているらしいその場面は、あたしとキスしているようにも見える。

 右下には時刻、秒数まで入っている。

 つまり昨日抜け出した時刻と、今朝早すぎる時刻が。
 

 会社で人気のイケメン課長を弄んでいる――。

 それがあの悪意あるざわめきの理由?


 これを結城も香月課長も見たのだろうか。
 
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