この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

・
・
・
・
不安で胸が張り裂けそうだった株主総会は、あたし達の意志を貫いた形で、閉幕した。
反省すべき点は、株主を疑ってしまったこと。
結局、総会屋のように野次を飛ばしたりして決議を邪魔する存在は、ひとりもいなかったのだ。副社長ら一派が総会屋みたいなものだった。
カーッペッのおじいさんも、目つきの悪い男性も、厳めしい顔をしたスーツの男性達も、あのヤクザのような強面をしていた男性ですら、最後はにこやかに結城に拍手をしてくれるほどの人達で、後で結城にそのことを告げると、抱腹絶倒だった。
結城はすべての株主を覚えていた。
怪しい株主はいないと思ったからこそ、総会で飾らない自分の言葉で引き寄せようと思ったそうだ。話せばわかる、と。
その結果、総会が終わって帰る間際、株主達が笑いながら、今度夕飯でも食べようよと結城を誘うほど、結城は気に入られたようだった。
「俺さ、実は下心あるんだ」
すべてを見送った後、結城は笑いながらあたしに言った。
「下心?」
「そう。俺、絶対……個人的に力になって貰うつもりだ」
「え?」
結城の視線の先は、矢島社長とにこやかに話す朱羽が居た。
「あいつを救うために、俺はどうしても……この総会で勝ちたかった。どうしても、社長になりたかったんだ」
「結城……」
「親父みたいな力はねぇけど、それでも課長の俺よりはマシだろ。あいつは、副社長を抑えるために、あの向島専務を来させた。それくらいのことをしでかす奴を、俺が救えると断言はできねぇけど、それでも弾よけくらいにはなってやる」
「……っ」
そんな時、結城の頭に誰かの手が置かれて、あたしも結城も驚いてその主を見た。
「よく頑張ったな」
それは、さきほどまで名取川文乃と会話をしていた宮坂専務だった。
一瞬……月代社長かと思ってしまった。

