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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「結城が、打ち合わせ通りのものを敢行していたら、副社長のペースに巻き込まれた株主は、否決していただろう。お前が自分のペースで株主を惹き込んだことは、副社長に出来ない技。だから面食らっていただろうが」
「め、面食らっていたんですか!?」
それでも、言いたい放題だったと思ったけれど。
「いつもはあんなにおとなしくねぇぞ。あいつがマシンガンのように話し始めるのは、あいつのペースになっている時だ。だけど結城は、副社長を除いた全員を惹き込んだ。初めてだろうさ、手を回していた奴らからも見放されて、孤立した気分になったのは」
「プライド、傷つけちまったですかね、俺」
「ああ、ズタズタだろうさ。忍月以外の、一介の営業課長如きに壇上で説教されたんだからな」
専務は大笑いをし、結城はバツの悪そうな顔をした。
「だけどお前が、やり手だということは、テレビカメラが捕えた。本当にいい具合にテレビカメラと記者がいてくれたから……」
「お気に召していただけたようで、なにより」
それは名取川文乃だった。
「あの……ひとつお伺いしたいんですが」
「なに?」
あたしは聞いた。
「名取川さんが、カメラマンと記者に、ここに来るようにと指示されたと聞きました。それは名取川さんは、どんな株主総会を予想していたからなんですか?」
「ふふふ…。そりゃあ、あの分からず屋が黙るはずがないと思っていたから、子供のようにとにかく反対して迎合しようとしない恥ずかしいサマをお茶の間に流すことがひとつ。
そしてあの分からず屋を黙らせるためには、勝利を確信したのちに突き落とすのが効果的だと思ったのがふたつ。せっかくマスコミの方々が来て下さったんだから、手土産は用意しないとね」
怖っ!!
「色々なネタを持っていたのよ、それなのに向島専務にやられちゃった」
「彼は今どこに……」
きょろきょろすると、丁度向島専務がやってきたところだった。
「よぅ、プレーリードッグ」
誰に言ったのだろう。
「お前だ、そこの」
あたしが指をさされた。

