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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

「え、まだしつこく杏奈のことを……」
「しつこくて悪かったな!!」
「三上さんの前に、顔を合わせてちゃんとしたい相手がいるんですよ、このひと」
なんで朱羽は、向島専務の優位に立てるのだろう。
不思議で仕方がない。
「……お前、かなり慇懃無礼な奴だよな。いい度胸だ。さすがは忍月の跡取り」
コメカミの青筋がぴくぴくしている。
「跡取りになりません。それよりいいんですか? せっかくの和解のチャンスを棒に振って」
「和解? 誰と? あたし達?」
「違います。さあ、では皆さん。あちらに移動しましょう。ここは今から、青春劇が始まるんです。もう若くないふたりですが、ふたりきりにさせてあげましょう」
「青春劇?」
わからないままに、朱羽はあたしをくるりと回して背を押した。
その場に残るのは――。
「今度、飲むぞ!!」
そんなぶっきらぼうな怒鳴り声が背後から聞こえて、あたしは声をたてて笑ってしまった。
「うるさい、黙れプー!!」
……あたしはプーさんか。
朱羽は後ろからあたしに囁く。
「……忍月のことを彼は聞いて、なぜか俺のスマホの番号を調べて俺に電話をかけてきた。渉さんを心配しているのなら、渉さんに電話をかければいいのに、偉そうな忠告だけは渉さんにしていたみたいだけれど、忍月の件に関しては財閥に足を踏み入れた先輩気取りで、俺に偉そうに長々と。それで経緯は端折るけど、渉さんと和解のチャンスをあげるから、協力しろと」
端折られたところが重要な気がする。
「朱羽、それ……反対じゃない?」
頭を捻るようにして後ろを振り向くと、朱羽の眼鏡のレンズが光った。
「それがなにか?」
「うわ……」
むちゃくちゃであっても、それでもちゃんと向島専務は来てくれた。
向島専務に物怖じせず、機転を利かせて、連れ出したのは朱羽――。

