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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
 

 
 あたしの目の前で、結城が手のひらを下にして手を伸ばした。


「え?」

「熱血は、こうでなくっちゃ。俺は香月を助ける」

「私も助ける」

 これは衣里。

「俺もっす!」

「杏奈もだよ!」

 全員の手が重なっていく。

「あたしも、絶対朱羽を自由にする」

 その上に、名取川文乃と矢島社長の手も重ねられた。

「ね、文乃。面白いでしょ、ここの社員。なんか限界知らずよね」

「ふふふ、怖い物知らずだけど自分の力の限界を知っているのを見ていると、手を差し伸べたくなっちゃうわね」

「え……と?」

 あたし達ははしゃぐ女ふたりを見た。

「「同級生で友達」」


「ええええええ!?」 


 確かに名取川文乃の家と、やじまホテルは相似していた。

 まさか仲良しさんだから、同じにしちゃった……とかありそうな、威厳よりなにより和気藹々とした女ふたりは、ただの年上の女性としか見えず。

「私ね、ホテルの悩み事を、香月課長にまだまだ相談したいの。シークレットムーン以外は嫌だから、いつまでもシークレットムーンの課長で居てね。あ、出世は大歓迎よ?」

 矢島社長が笑う。

「私が居て、財閥の当主にならない力を貸すとはおかしくて仕方がないけれど、宮坂さんにとばっちりいかないよう、私も影ながら応援します」

 名取川文乃が笑う。


「ほらほら、香月課長。締めないと」

 衣里の声に朱羽が笑って手を乗せようとすると、その前にふたつ手が重なった。

「お前ら、俺を置いてなにしてるんだよ……」

 焦った顔の宮坂専務。

「はっ、俺まで手を伸ばしてしまったじゃないか」

 慮外とでも言いたげな向島専務に、朱羽が冷ややかに言った。

「嫌ならどうぞ、お離し下さい。ですがそれだったら三上さんに……」

「あわわわわ、いい、これでいい!! 乗りかかった船だ!!」

 ……杏奈関係で、朱羽に弱み握られているんだな、向島専務。

 そして朱羽が一番上に手を置いて、朱羽は言った。


「俺も決して負けません。負けないために皆さんの力を貸して下さい。絶対、勝ち取りに行きます!!」


「「「おーっ!!!」」」


 全員で声を揃えた。



 ……次は朱羽の番だ。

 あさって朱羽は、勝手に見合いが開かれる。

 それを潰さないとね。




 
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