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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

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「乾杯!!」
病室内、もう幾度目になる宴が始まる。
いつもと違うのは、それがコンビニから調達した安いものではなく、一流シェフが作った豪華な中華が色とりどりに並べられているのだ。
それもそのはず、名取川文乃と矢島社長のコネで、どこかのレストランの支配人達が病室に運んだ数々の料理は、フカヒレスープまである超高級品。
さらに樽に入った、年代物の紹興酒が飲み放題だという。
結城社長就任と月代会長就任を祝い、朱羽の戦いが勝利に導くことを願っての、ささやかなプレゼントだと彼女達は笑ったが、ささやかどころの話ではない。
立食形式の無礼講とはいえ、机が足りずに至る所に大皿が置かれ、病人がいるとは思えないホームパーティに早変わり。
途中、匂いをかぎつけた看護師さんが怒って入って来たが、そこはやり手の女ふたりがうまくいいくるめたようで、祝賀会は盛り上がる。
「なんで、むっちゃん酒飲んでるんだよ……」
絶対禁酒の社長……いや会長が恨めしそうに、紹興酒でほろ酔いになった結城に言った。
「じゃあ飲む?」
会長の目の前にグラスを掲げて、にやりと笑う結城。
飲めないのをわかっていて意地悪を言う結城に、社長は大げさに泣き真似をした。
少しずつ昔の会長に戻っている。
会長も寝たきりで終わる男ではない。
それを見ていると嬉しくなった。
あたし達が悩んで苦しんで勝ち取ったものに感化され、生きる力にしようとしてくれているのなら、こんなに嬉しいことはない。

