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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon

そんな時、電話がかかってきた。衣里だと思ってスマホを取り出したら、それは見知らぬ番号。
それでも衣里のスマホが壊れて、別の番号でかけたのかもしれないと、応答してみた。
『もしもし、鹿沼さん? 昨日はどうもありがとう』
「いえ、こちらこそ色々とありがとうございました」
電話の相手は名取川文乃だった。
携帯番号を教えていなかったが、調べたか聞いたかしたのだろう。
『これから、うちに来て貰えるかしら。今どこ?』
それは突然のお誘い。
「今は江戸川区の船堀ですが、車で来てますので……なにかございました?」
『香月さんのために、あなた頑張るんでしょう?』
「はい?」
『だったら、短期間だろうと私が色々な特訓をします。……泊まりがけよ。香月さんと来ていいけれど、寝る場所は別々。いいわね、うちでふしだらなことは許しません』
ひぇぇぇぇぇ!?
なに、なに!?
あたしなにされるの!?
あたしから血の気が引いた。
「あ、あのですね、名取川さん。明日……」
「ええ、明日は香月さんのお見合いでしょう? 午後二時から帝王ホテルで。お相手は……うちに来たら教えてあげるわ」
名取川文乃は、含んだ笑い声を響かせ、電話を切った。
スピーカーにしていたため、会話を聞いていた木島くんと杏奈は気の毒そうな顔をしてあたしを見ている。
あたしは助けを求めるように涙目で朱羽を見たが、
「すべてわかっていながら呼んでいるんだ。もう俺はどうすることも出来ない。……行こう、意味があると思うから」
名取川文乃はあたしになにをしようとしているのだろうか。
まさかあの変わった茶道をちゃんと出来ているか、抜き打ちテストみたいなものとか!?
ドキドキするあたしを乗せて、木島くんが運転する護送車もどきは、名取川文乃の家に向かった。

