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無意味なPKを持つJKの話
第3章 カンがピンと
いつもの様に、ヅラ野の頭からそっとヅラを持ち上げる。

3秒ほど持ち上げて、すぐ下ろす。

誰にも気づかれない、ハズだった。


その日は調子に乗っていつもより長く浮かべてしまった。

それでも5秒ほど。

その僅かな時間に、いつもならほとんど動かないヅラ野がわずかに顔を動かした。

慌てて浮かべたヅラを落としたが間に合わず、少しナナメに着地してしまった。


!!


ほんのわずか。

もちろん、いつも通りヅラ野は全く気づいてない。



誰にも気づかれていないと思っていた。

しかし、乗りドコロが悪かったヅラが、時間をかけて少しずつズリ落ちはじめてしまい。

どこからともなく、クスクスと笑い声が起き始めた。


恐らくクラスの半数ぐらいが気づいたところで、ヅラ野本人も気づいたらしい。

慌ててかきあげるような仕草をして、ヅラを直し。

その不自然な仕草に、クラス全員が気づいてどっと沸き立った。

クラスをひとにらみして、またいつもの様に授業が再開した。


笑い声は収まったものの、皆こらえるのがやっとで。

チャイムが鳴ってそそくさと逃げるようにヅラ野が退散すると、クラスは爆笑に包まれた。


そんな大笑いするクラスの中で、私は冷や汗ものだった。

しかし、チカラの事は全く気付かれてはいない。

内心ヒヤヒヤしながら、その日の授業を終えた。




家にまっすぐ帰りたくなくて、いつも通りほとんど人のいない図書室でぼーっと過ごす。

少し前までは以前の高校の友達とLINEしたり、電話したりして時間を潰していたが、今ではすっかりその回数も減った。


図書室からは、校庭が見えた。
野球部や陸上部の動き回るのをぼーっと眺めたり。
近くの音楽室から流れてくる吹奏楽部の、外れた音をぼけっと聞いたりした。

たいして面白くはないが、早く家に帰るよりはマシだ。

ある程度時間を潰してから校舎を出る。
学校から家まで、自転車で45分ほどかかる。

田舎の学校で、そのぐらいの距離を自転車で通う生徒は珍しくなかった。

だから自転車置き場はとても広い。

放課後すぐは、帰宅部の人たちで溢れ。
部活が終わる時間帯も、人で溢れて混雑している。

そんな混雑が嫌で、ハザマの誰もいない時間にこっそり帰るのが常であった。
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