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無意味なPKを持つJKの話
第12章 春が来る
泣きじゃくってしまって、翌日の卒業式は真っ赤に腫れた目で参加するハメになった。

何度も小川とすれ違いそうになるけど、そんな顔を見られたくなくて、なるべく避けて見せないようにした。

それでも、ずっと顔を伏せてる訳にもいかなくて、結局バレバレだったと思う。

クラスに最後まで溶け込まなかった明子が、明らかに泣いていた風の様子を見て、ざわめくクラスメイトもいたぐらいだ。

最後のHRも終わり、この後、クラスの皆でカラオケに行くとかで盛り上がっている。

明子も一応声をかけられてはいるが、そんなの行くつもりは無い。

写メを撮ったり、抱きあったりして盛り上がる教室をそっと後にする。

小川も誰かと肩を組んで写真を撮ってるようだ。


これでいい。

廊下や自転車置き場にも人が溢れている。

卒業式には、体育館の広さの関係で1、2年生は代表しか出席してかなった。
とはいえ、部活で何かをするトコロも多いらしく、自転車置き場はたくさんの自転車で溢れている。

父兄の自転車も置かれていて、その多さにすんなり帰れると思っていたのに手こずってしまう。

明子の自転車に、隣の自転車が絡まって、なかなか引き出せない。

やっとの思いで、自転車をバックさせようとした時。

明らかに、後輪を横から蹴られた。 

「ちょっと!!」

「お前が無視するからだろ!」

後輪を蹴っていたのは小川だった。

「え、...なんで?」

「なんでじゃねーよ。帰んの?」

気づかれずにここまで来れたと思ったのに。

ここまで、今日一日顔を合わせることなく来れたのに。

よりによって、この思い出の場所で引き止められるとは。

強い視線に体が固まってしまう。

「...うん。帰る」

荷台を掴んで明子を睨むようにしていたが、それを聞いてしばらくしてからパッと手を離した。

「そう」

自転車を急いで動かして、その場を立ち去る。

心臓が飛び出してきそうだ。

何か言わなきゃと思っても、言葉が出てこない。

「じゃ」

かなり離れて、なんとかそう言って自転車に乗った。

「おう。元気でな」

明子の小さな声でも聞こえたのか、小川の大きな声が返ってきて背中にぶつかる。
 

好きだった。

本当に。



今度は何故か涙は出なかった。
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