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無意味なPKを持つJKの話
第7章 小川の家
あの日、どうやって家に帰ったかわからない。

母親のシフト次第で、家に呼べるか分からないから、連絡先を。
と、始めてメアドを交換した。

LINEのが便利だと思うのだが、小川がメールがいいと言い張った気がする。

そのあたりもうろ覚えだ。


交換しただけで、メールが来る気配もない。

明子から用がある訳でなく、する気にもなれず。
2日はそのまま何もなく過ぎた。

3日目の金曜日、昼休みに唐突にメールが来た。

『今日なら』

たったそれだけ。

明子も『了解』と端的に返す。

送っておいて、詳しい小川の家の住所を聞いてなかったのを思い出し、追加ですぐ聞いてみる。

すぐに住所と家の目印が書かれたメールが帰ってきた。


放課後、図書館で教科書をとりあえず広げて時間を潰す。
勉強もしなくてはならないのだが、全く頭に入りそうにない。

いつもの時間近くになった。
自転車置き場が空いている時間。

ただ、河原の時と違って、先に行って待っとく理由には行かない。

結局、部活終わりの人たちに紛れて学校を後にした。


小川の家に行くのも、あえてゆっくり自転車を漕いだ。

目印は、玄関前の紫陽花。

“小川”姓の家が並ぶ中、ちいさな二階建ての玄関に紫陽花があった。

少し離れた空き地に隠れるように自転車を置いて、玄関前で呼吸を整える。

引き戸の横についている、音が鳴るだけのチャイムを鳴らそうとしたところに、ガラガラと引き戸が開いて小川が出てきた。

「おせーよ!ほら、入って」

チャイムを押そうと上げていた手を、小川がガシッと掴んで家の中に乱暴に引き入れる。

「ちょっ!」

バランスを崩して、つんのめるようにして玄関に入った。

玄関に倒れそうになるのを、小川が抱きとめる。

「...あっぶな!」

もう少しで高さのある段差のところに、アタマをぶつけるところだった。
ような気がする。

シャツ越しに小川の体温を感じて、慌てて離れる。

一瞬、抱きしめられていて。
その行動に顔が赤くなるのを感じる。

「なんだよ。助けてやったのに」

「...臭い」

そんな意識してるかのような自分の行動が恥ずかしくて、咄嗟に思ったことを言ってしまう。

「悪かったな。シャワーまだなもんで」

部活の汗だろう。独特の臭いがした気がした。
そんなに言うほど臭くはないのだが。
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