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蜘蛛の巣
第5章 告白
「あの……」
「入学おめでとう」
壮真は何を言っていいか分からず戸惑う華を遮って祝いの言葉を述べる
「あ、ありがとうございます……」
「どう、大学生になった気分は?」
「え…と……」
答えられない華に壮真は無言でハンドルを切る
そして完全に右に曲がったところで別の話題を振った
「昨日は実家に泊まったんだよね。久しぶりにご家族と過ごすと全然気分が違うでしょう」
「は…い……」
「……そういえば、華ちゃんの家は何かペットとか飼ってるの? 犬とか」
「いえ……何も」
ああ、この人は。
「邸でも飼おうかって話があったりするんだけど、もう二匹もいるからって皆言うんだ」
精一杯私に気を使ってくれているんだ
「アーヤとカーヤを指してね」
嬉しさではなく、申し訳なさに涙が溢れた
「……」
車内が静寂に包まれる
ああ、いやだ
こういう時こそ喋っていてほしいのにーーー
その静けさを保ったまま、車は邸の前に停車した
「ありがと…ございました……」
涙声でそう言ってドアを開ける
そのまま降りようとした華の腕を壮真が掴んで引き戻した