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蜘蛛の巣
第1章 出逢い



呉羽の視線を辿ると、ちょうど入り口から一人の女性が出てきたところだった



「では失礼致します」



呉羽は今度こそ一礼して去り、車は華を残して主人の屋敷に帰っていった



「白河華様でいらっしゃいますね」

「ひゃ、はい」



緊張しすぎて口の中がカラカラだ

白髪混じりの髪をびしっと結わえ、着物をきっちりと着こなした厳しそうな使用人を前にして華の脚は微かに震えていた



「お待ちしておりました。私はこの邸の使用人頭で橘と申します」



なんだろう

ほとんど笑わない

宗家も分家も皆こんな感じなのだろうか



「ご案内致しますので、どうぞこちらへ」



華はゴクリと唾を飲んで覚悟を決めると、橘の後について歩き出した



「私たちはここにいらっしゃる七人のご子息様のお世話をしております。華様にももちろんお仕え致しますが……何分人手不足ですし、花嫁修業ですからある程度はご容赦下さいませね」



上手いこと言葉を濁しているが、言っていることは呉羽と同じだ

ここは男中心の世界

女の、しかも良くて中の上程度の生活を送ってきた小娘に払われる敬意などないらしい



"なんかますます不安になってきた……"



ここに私の居場所はあるのだろうか

一日やそこらで帰れと言われてしまうんじゃないかーーー


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