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蜘蛛の巣
第7章 それぞれの顔
それでも二人は落ち着いている
第二セットとの合間に二言三言交わし、そのセットは余裕で取り返す
だが勝負はここからだった
次のセット、取った方が勝利
両者の間の緊張が高まる
「長いねぇ。よく二人とも疲れないね」
「いや、疲れてますよ。だって……」
言い掛けた瞬間、綾斗が球を取りこぼした
素人目にも分かる、絶好のチャンスだったのに。
これでゲームカウントは5-6
あとがなくなってしまった
「アーヤ、大丈夫かな……」
この失敗のせいで、目に見えて固くなっている
茅斗は何も言わない
肩を叩いたりすることもない
「カーヤもしかして…怒ってる……?」
「ねぇ、どっちがどっち?」
「えっ?」
このタイミングでのこの質問に華は思わずコートから目を離してしまった
「僕いつも左目のナキボクロで見分けてるからさー、こっからじゃ見えないんだよねぇ」
煉は手で日射しを遮って目を細める
「確かにカーヤにしかない特徴だけど……雰囲気で分かりません?」
「それは親戚の特権ってやつじゃないかなぁ」
いや、一応煉も遠縁とはいえ親戚のはずなのだが。
しかも二人が十二才の時から四年間、一つ屋根の下で過ごしていたのではなかったか。