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蜘蛛の巣
第8章 光と影
「泣きたいなら、俺の胸貸してやる」
結利の言葉に華はびっくりして顔を上げた
「……とか言ったら、どっかのタラシみたいで気持ち悪いな」
言われてハッと我に返り、二人とも同じ人物を思い浮かべてプッと吹き出す
「やだ……フフッ…煉さんに悪いって!」
「いや誰も…煉のことだなんて言ってねーよ……ッハハ!」
ほんのちょっとした一言なのに、二人して息を切らしながら爆笑する
「ハーッ…ごめんごめん。いいよ、ユウくんの好きな曲で」
笑いと共にこみ上げた涙を拭い息を整えながら華は言った
「いいのか?」
「うん。考えてみれば別に今泣きたい訳じゃないし」
"そう、だって今はこんなに楽しいんだから"
「悪いな、リク応えるって言ったのに」
「いいんだって。
私はユウくんがピアノ弾いてるとこが好きなんだから」
一瞬、
華には分からないほどのほんの一瞬、結利の動きが止まった
みるみるうちに顔が赤く染まってゆく
「あ…じゃあオレの好きな作曲家の作品から……」
それを見られるまいと慌てて顔を逸らし、ピアノの方へ向き直った