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蜘蛛の巣
第9章 悩み
と心の内で激しく毒づいた時、早霧の邸との渡り廊下がある扉の前に二人の使用人の姿が見えた
呉羽と、橘である
「……ですので、今年も壮真様にはお邸に留まって頂くということで」
「わかりました。お伝えしておきます」
何の話をしているのだろう
華は遠くで立ち止まり様子を窺っていたが、すぐに呉羽は自分の持ち場に戻って行った
「あ、あの! 橘さん!」
この機を逃すまいと急いで声を掛ける
橘は華の姿を捉えるなり一気に冷たい雰囲気を溢れさせた
「立ち聞きですか? 行儀がなっていませんわね」
一目見ただけでそんなことを言われ、さすがにむっとするのを隠せない
「なってないのはそっちの方よ。いちいち人に言いがかりつけて。
私はあなたに話があったけど邪魔しちゃ悪いと思ってわざわざ少し離れてただけですから!」
華の剣幕に橘が初めてたじろいだ
正しい主従関係を認識させられたらしい
頭を低く下げ、謝罪の言葉を口にした
「大変失礼致しました……何かわたくしにご用でしょうか?」
"これならいける!"
華はそう思った
「あの、大学の友達をここに呼んじゃ駄目ですか?」