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蜘蛛の巣
第9章 悩み



「駄目です」



すげなく断られる

が、それは何となく予想済みだった



「じゃあその子の家に今度外泊するならいいですよね?」

「駄目です」

「……っ!」



これは予想外だった



「何でですか!? この前は許可してくれたのに!」

「あれは例外中の例外です。他の皆様でさえ滅多にご実家に戻ることもないのに、ご友人と遊ぶためなどもってのほか!

ご自分が何のためにこのお屋敷に住まわれているのかもう一度お考え下さい」



そう言って橘は自分の仕事へと戻っていってしまった



一瞬主人になれたかと思ったのに、いつもと何ら変わらぬ態度に華は自分の無力さを思い知る



"そりゃあ皆と親睦を深めるのが目的だけどさ……"



その為に大事な友達を蔑ろにするなんてーーー



チャーチャーチャチャチャチャーチャー



狙いすましたかのようなタイミングで鳴り響く携帯

真里枝からだった



「……もしもし」

『もしもし…っていうか、分かりやす! それ明らかにダメだったって声じゃん!』

「うん…ごめん……ごめんね……」



申し訳なさ過ぎて泣きそうになる

もし先に確認していたのならこんな想いもさせずに済んだのにーーー



『あー、いいからいいから。華がおっちょこちょいなのは前から分かってたことだし! 誘ってくれただけで嬉しかったよ』

「……ホント?」

『あったりまえでしょ。まぁでも、次は気を付けてよ~?』

「うん」

『じゃあまた明日、学校でね』



二人は見えない相手に微笑み合いながら電話を切る

が、切った携帯を見つめながら真里枝はやはりため息をつかずにはいられないのだったーーー


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