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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。
一歩洞の中に足を踏み入れると、滝壺に落ちて跳ね返る水音が岩に反響して三人を包んだ
力強く水面に打ち付けられる滝水と、それによって上がる飛沫にそこは白く霞んでいた
「すごい……」
それしか言葉が浮かばない
壮大だが余計なものを一切含まない、まさに日本人に相応しい趣ーーー
「やっほーーーー!」
「……」
綾斗の声が洞の中にこだまする
趣もくそもない
「アーヤ…それはちょっと……」
「えー、だって他に人もいないし別にいいでしょー」
「ダメだよアーヤ。こういうのは静けさを楽しむものなんだから」
「……だってもともと静かじゃないし」
兄と違って茅斗にはなかなか風流心があるようだ
絶えず落ちては消えてゆく水の流れを見ながらどこか侘しげな目をしている
「…ああ、やっぱりこれじゃ滝に入るのは無理かな……」
「……」
"ん!?"
今、"滝に入る"って言った!?
自然にかかる滝飛沫を浴びたいっていう意味じゃなかったの!?
どんだけ滝に打たれたいのだろうかーーー
結局、茅斗の持ち合わせていたのも風流心とは全く別のものらしかったーーー