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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。



「……」

「……?」

「……いや、ないですケド」



普段から高校生とは思えぬ言動を繰り返しているくせに、実年齢よりも下にみられるとすぐにふてくされる

それがこの兄弟だった



“ウサギ可愛いなぁ”



一気に静かになって係の話を聞く二人を見ながら、華は寄ってきた茶色いウサギの頭を撫でる

ふと、華の近くにいた別の一羽がゲージの入り口の方へと跳ねて行った



「あっ、待ってそっちは……」



大丈夫だ、入り口はちゃんと閉まっている

外側から三人の姿を眺めていた和樹がその存在に気付いた



「何? ニンジンなら持ってないけど」



立って柵に体を預けたまま和樹は彼(彼女?)を見下ろして言った

それは当然伝わるはずもなく、ウサギは鼻を忙しなく動かしながら首を傾げる

その時不意に柵の隙間から手が伸ばされ、ウサギの目線がそちらに動いた



「……」



恐る恐る近付き、彼の手に触れる−−−



「……フ」



要が目を細めて少し嬉しそうに微笑むのを華は見逃さなかった

彼が笑っているのを見るのは初めてだ

というか、そもそも感情を表に出すこと自体があまりにも少なかったものだから−−−



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