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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。



「中、入りませんか?」



華はつられて笑いながら要にそう声をかけた



「……!」



要は慌てて立ち上がり、浮かべていた笑みを隠す

急に動いた彼にびっくりしてウサギは逃げて行ってしまった



「入らない」



顔を逸らして冷たく言い放つ

だがその耳は真っ赤で、目は微かに泳いでいた



「クスッ……そうですか」



華は先ほどと同じように潔く引きつつも、彼のその様子に顔を綻ばせていた



要にもちゃんと人間味というものがあったのだ

それに、常に無関心を装いながらもその奥には確かに優しさがあるらしい

その証拠に彼に対してはどの動物たちも怯えず心を開いているように見えた−−−



******************************



行きは和樹の運転だったので、帰りは要がハンドルを握っていた

後部座席で華の両脇に座る双子は、さすがに疲れたのか彼女の方に寄り掛かりながら寝入っている



「そうしてればカワイイのにねぇ」



和樹が助手席から振り向いて笑った



「カワイイとか言ったらまた二人に怒られますよ。可愛いけど」



その寝顔に心が和まされる

彼女はまだ、肩に掛かる重みの意味を分かっていなかった−−−


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