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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。
「……負けた」
特に点数をつけていたわけではないが、大接戦の末彼はそう判断したらしい
以前のように悔しげに押し黙ったまま茅斗はベンチに腰掛けた
放たれる空気はかなり、ヤバい
"あ、もしかして要さんはこれを気にしたのかな"
そんなことを考える華に、突如綾斗からお声が掛かった
「じゃあ次はハナとボクね!」
「えっ」
「だってハナまだやってないでしょ! ほらほら、早く来て!」
腕を引っ張られ強引に立たされる
「絶対無理…出来ない……」
「大丈夫、優しくするから!」
だからアーヤの"大丈夫"は大丈夫じゃないんだって。
「いくよー」
彼女の心中もお構い無しに綾斗が球を上げる
華は慌ててラケットを構えた
綾斗の出した球がネットの向こう側で一回跳ねる
そしてネットを越えてもう一回ーーー
本当だ、思ってたよりゆっくり。
これなら、取れるーーー