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蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。
「ハァ…ッ……も、むり……っ」
華の口から熱い息が零れる
髪は汗で額に張り付き、頬は上気していた
「アーヤぁ、もうやめてあげたら? ハナが倒れちゃうし、こんなの全然楽しくないよ」
ずっと見ていた茅斗がようやく助け船を出す
ありがたい反面、もう少し早く言って欲しかったと思わずにはいられない華であった
「ぅ……ごめんね、ハナ。ボクつい夢中になっちゃって……」
「ううん、大丈夫だよ。私の方こそ、こんなにしてもらったのに……」
なんとかラケットに球が当たるようにはなったものの、そのほとんどはあらぬ方向へ飛んでゆき、要がそれを黙々と回収する
そんな感じで小一時間が過ぎていた
「あー、すごい汗かいちゃったなぁ」
華は少しはだけて汗ばんだ肌を覗かせる浴衣を正す
その時、それを見る和樹の目が微かにぎらついたのに華は気がつかなかった
「私、もう一回お風呂入ってきますね」
「もう貸し切りじゃないと思うけど、いいの?」
それを聞いて華は苦笑する
まさしくセレブらしい質問だ
「もう時間的に入る人も少ないと思うし、一人よりは誰かいたほうが落ち着くので」