この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蜘蛛の巣
第10章 旅先にて。
“だからいて欲しかったんだけどなぁ……”
またしても無人の露天風呂で、華は体の汗を流す
寝る直前のお風呂は良くないと聞くからあまり長くは浸からないでおこう
少しあったまったくらいで脱衣所に戻り、再び浴衣に着替える
“浴衣ってあんまり好きじゃないなぁ……動きずらいし、はだけるし……なんでこんなデザインなんだろ”
文句を垂れつつも、浴衣こそ温泉の醍醐味だと自分に言い聞かせていた
“ここの浴衣可愛いし”
鏡にうつるピンクの浴衣姿を見ながらどこかおかしなところがないか確かめる
最後に忘れ物を確認し、華は脱衣所を後にした
暖簾をくぐると、そこにはソファやマッサージ機の置かれたスペースがある
華は喉の渇きを覚えて自販機の前に立った
「……あ」
しまった
財布を部屋に置いてきた
わざわざ取りに戻るのも億劫で、華はため息をついてそこの飲み物を諦めようとした
「何が欲しいの? 僕が買ってあげるよ」
後ろから掛けられた声に驚いて華は飛び上がる